今回紹介する映画「舟を編む」は、2013年の作品です。
辞書を作ることになった編集部での、人間関係や仕事への取り組み方を描いた今回の映画。
この映画は透き通るような【心】を、仕事への情熱で磨き上げる作品に仕上がっています。
真剣なのになぜか見た後は「気持ちがほっこりする」映画。
今回はそんな映画「舟を編む」の感想と見どころをご紹介します。
不器用な人間たちのよりどころを表現した作品
舞台は1995年から始まります。
日本の大手である玄武書房辞書編集部は、新しい辞書をつくる計画を進めていました。
その辞書の収録語は、なんと24万語!
担当部署には3人しかおらず、どうしてもあと1人ほしい、と違う部署からスカウトするのです。
そのスカウトの白羽の矢が立ったのが、松田龍平演じる馬締(まじめ)。
その名の通り、真面目で地味!
声も小さくて何を話しているのかもわからない存在の彼。
しかし馬締の才能に気づいた担当者は、馬締を辞書製作に任命します。
この最初の松田龍平の登場が、また風変わりで面白いんです。
どこの会社にもいるような、一風浮いた存在の彼。
しかしその思考は、話をしてみなければわかりません。
馬締の才能を見出した小林薫演じる荒木もまた、原石を発掘することのできる才能の持ち主だったんですね。
難航する辞書作りと絡まる人間関係
辞書つくりのメンバーには、軟派な西岡がいました。
西岡を演じるのはオダギリジョー。
軽い調子でいい加減に生きている、という男ですが、馬締と出会ってから少しづつ本当の顔が見えてくるのです。
24万語も集めなければいけないので、辞書作りは難航します。
集めるというと、簡単に聞こえますが、今風の言葉や、昔の辞書に載っていても今は使われていない言葉などをピックアップしていきます。
そしてその1つ1つを、みんなで相談しながら辞書に載せる言葉を選出していくのです。
その選抜された言葉を集めたものを「用例採集・ようれいさいしゅう」と呼んでいました。
難航する辞書作りの傍ら、馬締は恋をします。
やっぱり恋の話はどんな映画にも欠かせないですよね!
馬締が住んでいる下宿の大家さんの孫娘・カグヤです。
カグヤは、物静かで読書が好きな女優。宮崎あおいさんが演じています。
カグヤに一目ぼれした馬締。
しかしうまくアプローチができず困っていました。
物静かで不器用でも、深く物事を考える馬締のいい部分が、じわじわとあらわれてくるエピソードになっています。
仕事と恋をめぐり心の交流が始まる
辞書作りは地味で面倒な作業ですが、この地道な作業を続けることによって、様々な出会いが生まれます。
はじまりの小さな点から始まり、幾多の人を巻き込み、折り重なった時間が心の交流という「味」を生み出すんですね。
カグヤは日本料理の職人ですが、お料理にも子育てにもどんな仕事にも、共通することがあります。
それは「じっとその物事に真剣に寄り添う事」。
出汁は1度沸騰すると、もうその前の味には戻れません。
子供のミルクもこぼしてしまうと、もう飲ませられない。
だから勝負はその時の1度が肝心なのです。
だからこそ馬締達は、後からはやり直しがきかない辞書作りに、悩み足掻き心髄を捧げます。
同じ方向を向いて、励ましあい協力しあう者こそが、本当の意味で心を通わせあうことができるんですね!
馬締とカグヤの恋の行方と辞書の完成
真面目な馬締は、カグヤにラブレターを書きました。
しかしそれはラブレターと言うよりも、まるで平安時代の恋文のよう。
戸惑ったカグヤですが、内容にグッときたので馬締と交際を始めます。
それからも辞書作りには長年の年月がかかり、馬締とカグヤは結婚。
西岡も結婚し子供も誕生しています。
長い間ひとつの事に精通していくと、人と人の出会いと別れはつきものですが。
最後に辞書が完成して、少し自信をもった馬締は、カグヤに「これからもよろしくお願いします」と、しっかりとした声で言うのでした。
ここがこの映画の1番の感動ポイントだと思います。
まとめ
今回は一見地味に思える辞書作りを巡る映画「舟を編む」の感想の紹介でした。
職人の仕事といいますか、出版業界でもどんな仕事でも【専門の職人】であることには変わりありません。
昨今でも派手な仕事は人気がありますが、1つの仕事に専念するからこそ生まれる「新しい世界」もあるわけです。
今自分の周りを見渡してみて、お互いの心を汲みあえるような関係性が築けているでしょうか。
その答えは、ちょっとした言葉尻や行動から見えてきます。
自分が相手を大事にすれば、空気も丸くなっていく。
大きな荒海でもわたっていける「舟を編む」ことができるのかもしれませんね。
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